高瀬舟 森鴎外 

荒木です。

「・・・、人の一生というような事を思ってみた。人は身に病があると、この病がなかったらと思う。その日その日の食がないと、食っていかれたらと思う。万一の時に備える蓄えがないと、少しでも蓄があったらと思う。蓄があっても、又その蓄がもっと多かったらと思う。かくの如くに先から先へと考えて見れば、人はどこまで往って踏み止まることが出来るものやら分からない。それを今目の前で踏み止まって見せてくれるのがこの喜助だと、庄兵衛は気が附いた。」

森鴎外 『高瀬舟』

喜助のように、理由はなんであれ、それが成り行きであったとしても、結果として踏み止まった人は、「ごう光(仏のびゃくごうから四方に発せられる細い光)がさすように」、僕にも感じられる。

良く生きる、とか、うまく生きる、とかじゃない。

ただ踏み止まってしぶとく生きる、という価値に近い気がする。

森鴎外の世界観、人生観にもっと触れてみたいと思う。